労働社会保険の提出代行と事務代理について

提出代行の事務について

「提出代行」の事務は、労働社会保険諸法令に基づく申請書類等の提出に必要な一切の事務処理を事業主や申請者等に代わって行う行為です。

 

ここに言う「提出代行」とは、必ずしも法律行為(許認可申請等)あるいは、事実行為(報告、届出等)に限らず、労働社会保険諸法令に基づくすべての提出書類を行政機関が受理(提出義務者の提出書類を有効なものとして受領)するまでの必要な行為、すなわち、単に事業主や労働者等の「使者」ではなく、必要に応じて行政機関等に説明を行い、その質問に回答し、または、提出書類に必要な補正を行うなどの行為も含まれます。

事務代理の事務について

「事務代理」は、労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、審査請求、異議申し立て及び再審査請求等の事項(厚生労働省令で定めるものに限る)について、また、これらの申請等に対し行政機関等が行う調査、処分に関する主張もしくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く)について代理する事務です。

 

「事務代理」は労働社会保険諸法令に基づくものですが、「代理」という表現をとっていても、民法の「代理」とは異なります。民法の「代理」では代理人として代理した案件についての処分権も有しているとされますが、「事務代理」では代理人たる社労士は、代理した案件の処分権を有していません。

 

代理の内容は申請等及びこれらに対する行政機関等の調査、処分に関して行う主張・陳述等の事実行為にとどまります。したがって、代理人の判断を入れる余地はありません。

 

しかし、「行政不服審査法」に基づく、不服申し立ての代理人としての業務は、行政不服審査代理業務として、代理人である社労士の名義で申立てを行うことができます。

 

また、審査等の過程で行われる調査、審理等において、代理人たる社労士が主張、陳述、答弁等を独立して行うことになるので、一般の事務代理とは異なり、代理人の判断を入れて行うことになります。

提出代行と事務代理の違い

「提出代行」は、申請書等の提出手続に関して行政機関等に事実上の説明補正等を行えるにとどまりますが、「事務代理」は、社労士が本人(依頼者)に代わって申請等を行うことができます。

 

このため「事務代理」では、委託の範囲内で内容の変更等を行うだけでなく、当該申請等に対する行政機関等の調査、処分に関する主張または陳述を行うこともできます。

 

たとえば、「提出代行」の事務の例として、顧問先からの依頼に応じ、労働社会保険諸法令に基づく申請等を行う際、提出代行を行う社労士は、書類提出の際に、申請書に記載された事務所記号番号等の記載誤りがあった場合に補正を行う等の対応ができるのです。

 

また「事務代理」の事務の例としては、労災保険の給付申請に関する業務上外の認定や年金請求に関する決定について、これを不服として労働保険、社会保険の審査官及び審査会に審査請求を行うような場合に、社労士が「事務代理」の権限によって、審査の過程で行われる調査、審理等において、代理人として主張、陳述、答弁を独立して行うことができるのです。


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